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ここは群馬県太田市。午前10時半出発。目的地は無いが、目的は歩く事で手段も歩く事。国道沿いを歩く。ガソリンの臭いと長距離バスの騒音とチェーン店からできたこの道は車道と歩道の距離が近く歩道自体も狭い。なのでガソリンの臭いがやけに鼻に付く。僕は国道を右折し、小道に入る。車一台分のその道の両端には庭の大きな家が並ぶ。敷地にもう一軒家が建つくらいの庭がある。こうみている
と北海道の地元を思い出す。道路脇には厳しい冬を越えて春を待っている2本の植物が並んで立っていた。その2本は倒れないように1本の紐で簡単に支えられ優しい人の手
が加えられていることに心暖かくなる。国道沿いから離れると、雀が鳴きカラスが鳴き犬が吠えまた違う犬が吠える。郵便屋さんのバイクが最低限の音とスピードで一軒一軒に立ち寄って行く。


畑には頭というか上半身を出した大根が並んでいる。そしてネギ、ほうれん草がその脇に規則正しく並んでいる。こうやって葉を見ただけでその土の中で収穫を待つ野菜たちがいったいなんであるかを見分ける能力は田舎育ちのなせるわざなんだろうなぁ、なんてことを考えながらどうして大根はあんなにも上半身を土の上に出しているのかなぁ、あんなに出てると寒いだろうに、しもやけしちゃうだろうに、と大根の心配なんかさえしてしまう。


ビニールハウスの脇
には堆肥が入っていたであろう空いたビニール袋が捨てられている。畑が道路に面しているせいか、空き缶、新聞に挟まっているちらし広告、お菓子のゴミ、ペットボトルのゴミ、もうゴミだらけ。新宿区の方がきれいだなぁ。最近は吸い殻すら落ちてないもんなぁと感じてしまう事に違和感を感じつつ歩いていると、「ポイ捨て罰金3万円」という看板があった。3万円かぁ、たっけーなぁ、なんて思いながら歩いているとその通りにはまたゴミゴミゴミ。もう看板の役不足感明白過ぎ。全然捨てられてる。これが現実かぁ。








近くの家から黒煙があがりそれが北の空に抜けていくのが見える。庭で刈り取った雑草もしくは藁でも燃やしているのだろう。黒煙は風に吹かれて広がって数十メートル上で消えてなくなっていった。

時間は12時を回っていた。お腹も減ってきた。おいしそうな店があったら入ろうと思いながら歩いていると遠くに「そば」と書かれた看板が見える。よし、これは当たりだ!と思って近くに寄って行くとおじちゃんとおばちゃんの中年夫婦が見えた。
「すいませーん、やってます?ここって何か食べれるんですか?」
「あ〜来週オープンなんじゃわ。焼き肉とそばの店やるんで、来週来てくれな。」
「あ、そーなんすか、いやね、僕この辺の人間じゃなくてただ散歩してておいしそうな店を見つけたので立ち寄ってみたんです。また機会があれば来ますね」
「あら、そっか、帰っちまうんか〜」
「そうなんっすよ〜。残念ですね〜それではすいません、ありがとうございました」と言って私は頭をぺこりと下げて散歩と続けた。そこから200mくらい先に畑というより庭と言った方が面積的に正しい大きさの場所でほうれん草を刈り取っているおっちゃんがいた。そのおっちゃんとほうれん草についていろいろ話を聞いたりしていると、おっちゃんがノリノリで自らが育てたであろうほうれん草について語りだした。うちのは甘くて薄くてうまいんだ、とのこと。ほうほう、そうですかそうですか、それはすごい、では失礼します。

散歩はまだまだ続く。遠くに大きな照明の柱が何本も立っているところが見える。あれは何だろ何じゃろ野球場か何かかなと思って歩いて行くと歓声やら子供の声やら聴こえてきて、少年サッカーの試合がやっていた。ここは「いずみ総合公園」というらしい。その中にあるサッカー場で小学生であろう人たちが走り回り、保護者であろう人たちが写真を撮ったり声を上げたりひなたぼっこしたりしている。

その公園にはベンチもあったので、僕はそこに腰を下ろし小一時間ほど読書をした。40ページほど読んで僕は再び散歩に戻る。近くのベンチにおじいちゃんとおばあちゃんが並んで座っている。おばあちゃんが最近右の目が悪くなって、、、なんていうほのぼのした会話をしていて見てる僕も幸せになった。あぁ、こういう老夫婦って文句無く美しい、そう思えた。


それから僕は再び場所を移して利根川沿いを歩き始めた。利根川という名前を初めて知ったのはいつだったか。たしか小学4年生くらいの時だったと思う。夏休みの自由研究で世界の山や川、日本の山や川を調べ上げるようなことをした記憶がある。そのとき「長さだと信濃川、面積だと利根川」なんていう覚え方をしたものだった。
しかしその利根川をこうして堤防の柔らかい地面に腰を下ろしてマジマジと見つめるのはそのときから数えて約15年近くも経っているんだなぁと、その時間的ギャップに年をとっている事を再認識させられる。それにしても柔らかい地面に腰を下ろして寝転がるっていう事はとても気持ちいいものだなぁ。空は青い。地面はふかふか。きもちよか〜。









とかなんとかやっているといい加減に腹が減ってきた。ぐぅ〜。そろそろ昼ご飯を食べないと。さてさて何かうまいもんはねぇかぁ〜。再び僕はもと来た道に戻った。でも今度は違う道から帰る事にした。するとあるはあるは、おもしろい看板、面白い建物。まず最初に飛び込んできたのは、「新田義貞の隠し湯 やぶ塚温泉 この先16km」っていうやつん段けど、さすがの新田義貞も死後100年以上も経って隠していた湯がこんな開けっぴろげにバラされちゃうなんて思ってなかっただろうなあぁなんて余計な御節介×いらぬ心配×20000みたいなこと考えてると次ぎに出てきたのは、「キリスト教会」の看板。どう見ても元セブンイレブン。なんだか恥ずかしいなぁ、見ているこっちが恥ずかしいなぁ。顔だけ吉野家に入ったら店員が西洋人だったみたいな違和感だなぁ。。。




まぁそんなこんなで、なにやら怪しい食堂を見つけた。本当に残念な事に写真もとらず、店の名前すら忘れたのだが、「〜食堂」って名前だったことだけはたしか。外観はというと、もうきたないし、店先の看板は壊れてるし、曇りガラスで中は見えないし、営業してるのかすら疑問視していたが、とりあえずドアを開けてみる。「やってますか〜(ガラガラ)」
中に入ると脱サラしたおっさんとその嫁(リツ子/54歳)がいた。二人で切り盛りしているんだろう。メニューは豊富だ。壁に短冊みたいな紙がかかっていて、値段は500〜800円くらい。ラーメンやら定食やらおぉおぉどれもおいしそうだ。やばい、ナイスチョイス!この店にしてよかった!おばちゃん、肉ニラ定食一つ!!きたー!うまー!やっぱ家庭の味っ!おしんこ!みそ汁!ごはんはどんぶり!やっぱこうじゃなきゃねー!

そして飯を食い終わるとほかのお客さん(おじいちゃん)とお店の夫婦と僕という4人で世間話やら太田の土地の話やらを30分くらい楽しんだ。やっぱおっさんの話題はおもろいわーーーーー、、、なんて感じちゃってるのは自分がおっさん化しているまぎれも無い事実の裏付けてあるのかもしれない。まぁそんなこんなで再び店を出て歩き始めると、正面から自転車に乗ったおじいちゃんが来る。自転車をかわそうと歩道の左側に寄ると、おじいちゃんが僕の横で止まってこう言うんだ。

「小さい子見なかったけ?これくらいの(手で身長を表しながら)子供さ。自転車に乗ってたんだがなぁ〜」と、なんだか不安そうな表情。まぁ簡単に言うと、孫、行方不明といったところだ。とりあえず僕は飯を食って店を出て10歩くらいしかあるいてないし、子供の子の字も見ていない。むしろおっさんなら見た。2人くらい見た。なので誠に申し訳ないが力になれなかった。


そして僕はなんちゃら食堂でタバコをきらしたのを思い出し、高林の交差点を左折してとりあえず歩いて歩いてタバコが売ってるところが買おうと決めて西へ進んだ。そしたらなんだか面白い看板をまた見つけた。突っ込みどころがいりろあるんだけど、まず「うどん弁当」一瞬、「お前・・・まじかよ。本気かよ」って思った。そしてその後、やっぱり同じこと思った。うどん弁当ってなんだろう。それも150円て。どんべいかな。そして自販機の機の字がおかしい。どう考えてもおかしい。木へんにキって。んなアホな。唯一納得なのは、自販機の飲み物がたしかに50円で、それを人は激安と呼ぶ。その点はたしかにあたってるけど、でもなんか、、、なになにーー!!っていうね。









まぁそうこうしてタバコ買ってそして川沿い歩いて帰ってきたんだけど、結局3時間半くらいかかった。そしてこの日記書くのに1時間かかった。計5時間近くかかった。今日が終わる。







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