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そういえば、先日、ゲルハルトリヒター展に行った。これは個人的な記録としてとっておくことにした。

初台にある小さなギャラリーだ。

通称「オイル・オン・フォト」と言われるシリーズと、アルミ板に書かれた作品が1点、そしてキャンヴァスにかかれた油絵が1点。

「オイル・オン・フォト」シリーズの作品はどれも、現実的だ。
油彩は塗られたというより、写真というキャンバスの上に置かれているような印象。
その絵の具の動きは非論理的で偶然性に満ちているようだった。
だがこの魅力はいったいなんだろう。なんでこんな方法を用いたのだろう。
写真の上に油彩でペイントだなんて。abstract art×写真。具象×抽象。

クレメント・グリーンバーグがモダニズム画家として絶賛したジャクソン・ポロックの作品を初めてみた時を思い出した。そうだったそうだった。どう考えてもこれは意図して描かれたものではないだろうなぁ、でもアーティストが意図しないで作品を作ることなんてあるのか、そんな疑問を思い浮かべた記憶がある。

写実性ではカメラにはかなわないし、3D性においては彫刻にはかなわない。
そんな絵画というジャンルにおいて、唯一無二の特徴が「二次元性」だ。

絵の具が平面に乗っている、というこの状況は無意識的に「それが平面である」という事実を認識させられる。これは写真にはできない芸当だ。もちろん彫刻にも。


絵画を見たときに起こるこの直感的な感覚が僕はとても好きだ。
技法やバックグラウンドなどを知って、感嘆する行為はもちろんだが、それと同等に知識や言語で説明のつかない無意識的魅力。


あぁ、まぁだいたいこうなるだろうと思った。
絵画を鑑賞している時というのは、この投稿のようにカオスである。
正攻法で何を考えていたのか思い出そうとするのは滑稽な作業のように思う。


あ、あと、1点だけあったキャンバスに描かれた油絵がこれ。



























"Wall", oil on canvas, 1994 private collection


「壁」と名づけられたこの抽象絵画。大きさはおよそ2m四方。

リヒターはドイツ出身である。ドイツ=壁=ベルリンというベタな関連性が浮かぶ。
僕はしばらくその壁の前にいた。この絵についての考察は別にまた設けることにする。

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