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 先日、友人に肩掛けのバッグをもらった。
 半年遅れの誕生日プレゼントだそうだ。
 なかなか自分じゃ選ばない柄だけど、とても可愛く、使いやすいのでもらってから外に出るときはそ のバッグを使っている。頻繁に自転車に乗る僕にとっては形もサイズも収まりが良く、すでにお気に 入りになりつつある。

 しかし、そのバッグに喜んでいる僕に、僕の彼女とその友人が二人してこう言うのだ。

「オマエはいつも意味の分からんリュックをしょっているからプレゼントにカバンを選んだのだ。」と。



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そうそう、あれは僕がまだ高校生のころで、まだおじいちゃんが生きている頃だ。
そしてある程度自我が芽生えてからおじいちゃんと買い物に行った唯一の日だったかもしれない。
その日は雪が降っていて、歩道はアイスバーンだった。
うちのおじいちゃんはオシャレさんだった。
年齢を重ねてからも時に全身バーバリーとかで少し一緒に歩くのが恥ずかしくも、どこか誇らしかったくらいだ。

祖母が買い物に熱中している間、僕はおじいちゃんと二人ぶらぶらと西武の中を歩いていたら、おじいちゃんが「何か欲しいもんでもないのか?」「ばあさんがいない今のうちだぞ」とか言うんだ。俺はそんなおじいちゃん子でもなかったので、急にそんなことを言い出したおじいちゃんに軽い動揺をしていたと思う。「別に特に無いよ。」と答えると、「そうか。」と口数少なに、どこか寂しげにおじいちゃんは答えたのだった。

僕は逆に何かねだった方がここは孫としていいのかな、おじいちゃんもたまには孫に祖父らしいところを見せたいのかなと思って、僕は近くにあったカバン専門店のひとつのリュックを指差した。

「これがいいかな。」
「なになに、そうかそうか。よぉーし、じゃあばあさんが帰ってくる前に急がんとなぁ」

その時おじいちゃんに買ってもらったリュックは未だに現役で活躍中だ。
僕も気に入って使っている。




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なんていうエピソードは今思いつきで作ったのだが、友達と彼女にリュックを馬鹿にされてから、なかなかそのリュックを使えなくなっている。個人的には気に入っているのだが、どうしようかな、今後。

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